「ようやく面白くなってきたじゃない?」
言葉のとおり面白いものを見たかのような表情で私を見つめる殺女ちゃん。
「えっ…え?」
突然の事で全然状況が把握出来ない。
ただ目の前には電気を帯びたシールドのようなものが張っていた。
…次の瞬間。
「ハァッ!!」
「っ!?」
殺女ちゃんはさっきと比べ物にならない勢いで鎌を振り回し始めた。
…決して彼女の行動が読めたわけではない。
「!わ、私生きてる!?避けてる!?」
直感で私はそれを避けていた。
避けれていたのだ。
「りゅんりゅんかーっこいー!!」
暗ちゃんが歓声をあげる。
「さすが使者だね!ふぁいとー!あやおばなんかやっつけちゃえ!!」
いやぁ、こうも女の子に応援されちゃうとテンションあがっちゃうなー。
「よーし!がんばるぞい!!」
「暗?あとで覚えてなさい」
「ひぇえぇぇえ!しまった!ついー!!」
ドジっ子なのか暗ちゃんはまた殺女ちゃんをおばさん呼ばわりして黒い笑顔を向けられている。
「あはは…暗ちゃんドンマイ」
「やんやん!助けてりゅんりゅんー!!」
「鬼だから大丈夫でしょー?」
そんなしょうもない会話をしながらも戦いは続いている。
私が鎌を避け続けている最中。
突如、殺女ちゃんが動きを止めた。
それから宙に浮く。
「へっ?」
そして、
「スタビングトゥヴァッシュ!!」
「びゃっ!?」
両腕を横に広げ、言葉を放った。
するとなんと!彼女の周りに謎の紅い光の球のようなものが大量発生!しかも私の方に勢いよくびゅんびゅん飛んでくる!
「ぎゃぁぁぁああ!?」
あまりの驚きと恐怖に私は殺女ちゃんから背を向け全力で逃げ走る。
「ちょっ!?亜流!ちゃんと戦いなさい!」
「そう言われてもこれをどうしろと!?」
「自分で考えなさい!」
「そんな無茶な…!」
ただひたすら紅球(略)(こうきゅう)を避けながら逃げ続け、あるかどうかすら分からない戦い方を考えてみる。
「っ!」
ふと、ある言葉が脳裏に思い浮かんだ。
「こ…これは!」
逃げ続けるのをやめ、立ち止まる。
そして彼女の方へと振り返った。
「亜流!」
私に期待の眼差しを向ける殺女ちゃん。
目の前からはたくさんの紅球が迫ってきている。よく分からないけれどぐずぐずしている暇なんてない。
私は叫んだ。
「閃光月華ぁぁああ!!(せんこうげっか)」
辺りが光に包まれる。光はどんどん広がっていき、最終的には何も見えなくなった。
なに…これ?
しばらくしてそれはおさまった。
同時に辺りを見回す。目に入ったのは…
「っ!?」
倒れている殺女ちゃんだった。
どうやら全身に火傷を負ったみたいだ。
すぐさま彼女に駆け寄る。
「あ…」
しかし、声をかけようにも上手く言葉が出てこない。その場に立ちすくみ口をパクパクさせるだけしか出来なかった。
生きているのだろうか?
「…ふっ」
「え?」
かすかに笑った気がした。
そして、
がしっ!
「っ!?」
気がついたら腕をがっしり掴まれていた。
死んだ、と、そう思っていた私は完璧に油断していたみたいだ。
「甘いわね、亜流」
「ひっ…!」
ガッ!
「う゛っ…!!」
膝蹴りされた。
銃で撃たれた部分に当たったというのもあってかなり痛みが響きその場に倒れ込んでしまう。
…あっという間に立場逆転だ。
目の前には冷たい目で私を見下ろしている殺女ちゃんの姿があった。
「亜流。あなたまさか、私がこのくらいで死ぬと思ったわけじゃないでしょうね?…ねぇ、亜流。あなたの能力がその程度だなんて…」
「言わないわよね?」
私の頭を自分の目線の高さまで掴みあげながら軽蔑の視線を向けてくる。すごい圧力。
「…まさか…」
油断して少しダメージを喰らってしまったというだけで実質、私にはまだまだ力が残っていた。一方、殺女ちゃんの方は息切れも激しく、無理して強がっているようだった。
「分かってるんでしょ…ほら早く。戦うわよ」
このまま攻撃を続けるとおそらく死んでしまうだろう。
つまり彼女の言葉は「殺れ」と言っているようなもの。
「え…でも…」
「いいから早く。私なら大丈夫よ」
「む、無理!できないっ、こんな美少女をこ、殺しちゃうだなんて!!」
「まったく…変な駄々こねないの。あなたの実力を認めて勝利を捧げると言っているのよ?死はその証のようなもの」
ようやく私はこの戦いの終わりが「死」であるということを認識した。
「…ま、まって!それじゃあ、あっちの世界に送り帰してくれる人は?役目を伝えてくれる人はどうなるの?」
「私よ?」
「どういうこと!?」
死んじゃったら不可能なんじゃ…
「後々に分かるわ。…あーもう!ぐだぐだと!遅いわね」
「殺らないというのなら…殺るわよ?」
「っ!!」
不敵な笑みを浮かべる。
彼女にはもうほとんど力が残っていないように思えるがその表情からなんとなく身の危険を察知した。
嫌だ…消えたくない…!
もうこうなったら一か八かだ!
「ごめんね!殺女ちゃん!!」
額に手を添える。
えーと…まだイマイチよく分かってないけど!
「霊界突破!!(ブレックワールド)」
声に出すと殺女ちゃんの額に紋章のようなものが刻まれ、それは桃色に光った。
しばらくして私は手を離した。
すると彼女の身体は地面へ崩れ落ちる。
「ごめんね…殺女ちゃん…」
「なーんで2回言っちゃうのかなー?」
暫しの間、静かに対戦を鑑賞していたであろう暗ちゃんが声を掛けてきた。
「大事なことだからだよ」
「えーなんかシリアスみが欠けちゃ」
「それ言っちゃったら終わり!」
私、空気読めてなかったかな
…って、それよりも
「暗ちゃん。これ、殺女ちゃん死んじゃったの…?」
「うーん…まぁ、そうとも言えるねー!」
「そうとも?」
「うん!そうともー!!」
どういうことだろう?
不思議に思い、考えている時だった。
「亜流、聞こえるかしら?」
どこからともなく声が聞こえてくる。
「その声は…!」
To be continued...